今回は、区分所有法 第7条(先取特権)その3から進めて行きます。

先取特権 その1 はこちらから

先取特権 その2 はこちらから

 

(先取特権)
第七条 区分所有者は、①共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、②債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。③管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする
2 前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、④共益費用の先取特権とみなす。
3 民法(明治二十九年法律第八十九号)⑤第三百十九条の規定は、第一項の先取特権に準用する

共益費用の先取特権

民法の中で
(一般の先取特権)

第三百六条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。

一 共益の費用
二 雇用関係
三 葬式の費用
四 日用品の供給
(共益費用の先取特権)
第三百七条 共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用について存在する。
2 前項の費用のうちすべての債権者に有益でなかったものについては、先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在する。

とあり、先取特権の中にも順位があり、不動産・不動産上の動産に対して先取特権として一番目となります。
先取特権の順位は一番目ですが、登記された債権には勝てません。
勝てるのは一般債権(登記を必要としない債権ノミ)です。

(不動産賃貸の先取特権)
第三百十二条 不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する。

とあり、賃貸していれば賃料に先取特権を行使できる事となります。

では、他に「共益の費用」より上位に位置している物はあるのでしょうか。

(不動産保存の先取特権等の優先)

第十九条 次に掲げる先取特権が納税者の財産上にあるときは国税は、その換価代金につき、その先取特権により担保される債権次いで徴収する。

一 不動産保存の先取特権
二 不動産工事の先取特権
三 立木の先取特権に関する法律(明治四十三年法律第五十六号)第一項(立木の先取特権)の先取特権
四 商法(明治三十二年法律第四十八号)第八百二条(積荷等についての先取特権)若しくは第八百四十二条(船舶先取特権)、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律(昭和五十年法律第九十四号)第九十五条第一項(船舶先取特権)又は船舶油濁等損害賠償保障法(昭和五十年法律第九十五号)第五十五条第一項(船舶先取特権)の先取特権
五 国税に優先する債権のため又は国税のために動産を保存した者の先取特権
2 前項第三号から第五号まで(同項第三号に掲げる先取特権で登記をしたものを除く。)の規定は、その先取特権者が、強制換価手続において、その執行機関に対しその先取特権がある事実を証明した場合に限り適用する。

あるときは、となるので、登記されていればと言う事になります。

その他に先取特権より優位になる権利はあるかですが、

1 差押えにかかる費用・・・差押えするにも費用が必要ですので当然です。
2 登記された債権・・・登記簿に記載されている債権。
3 共用の債権(先取特権)・・・登記をすれば権利を与えられる。

これを見ると先取特権の優位性としてはどうでしょうか。

登記するには、登記権利者と登記義務者が双方で登記しなければいけない。=滞納者が協力しますか?
滞納者が協力的であれば、公正証書や民事調停の方が良いと思いますが。

そして、
裁判で勝訴した場合の強制執行は、当該マンションに関係なくても、滞納者の所有する財産であれば、原則差押え出来ることが可能。
先取特権は、当該不動産・当該不動産に備え付けられた動産のみ。
となります。

先取特権と言う言葉は、滞納者に対しての「相手より優位になる説明」として使用は出来ますが、実際には有利に働きません。

滞納状態をそのまま解決しないで売却する方も出てくる事から、
次の所有者にも義務を継続してもらう様に、第8条(特定承継人の責任)で回収できる様に出来る内容が記載されている条文となります。詳しくは、第8条で。


次回は、区分所有法 第7条(先取特権)その4 から進めて行きます。