今回は、区分所有法 第7条(先取特権)その4 から進めて行きます。
先取特権 その1 はこちらから
先取特権 その2 はこちらから
先取特権 その3 はこちらから
(先取特権)
第七条 区分所有者は、①共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、②債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。③管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
2 前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、④共益費用の先取特権とみなす。
3 民法(明治二十九年法律第八十九号)⑤第三百十九条の規定は、第一項の先取特権に準用する。
⑤ 第三百十九条の規定は、第一項の先取特権に準用する。
民法
(即時取得の規定の準用)
第三百十九条 第百九十二条から第百九十五条までの規定は、第三百十二条から前条までの規定による先取特権について準用する。
法律でよくある事ですが、「また遡らなあかんやん。」と何時も思います。
(即時取得)
第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
平穏に、かつ、公然に、善意無過失に、他人の動産を即時所得した場合、当該区分所有権のある建物内にある動産は先取特権の対象となり得る。
(盗品又は遺失物の回復)
第百九十三条 前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
盗品・遺失物においても、盗難・遺失があってから、その後2年間何も言わなかったら所有権が移転する。先取特権についても、当該区分所有権のある建物内の動産になり得る。
第百九十四条 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
盗品と知らなくて業者から買ったもに対して、被害者又は遺失者が対価を弁償しなければ回収出来ない。盗品・遺失物も先取特権により、当該区分所有権のある建物内の動産になり得る。
(動物の占有による権利の取得)
第百九十五条 家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。
難しい。家畜以外とは、ペットとして飼っている動物の事と思われる。善意で他人のペットを知らなくて1ヶ月以上飼い、飼い主から返してと言われなければ所有権がある事になる。何かおかしいと思いますが民法の条文となります。先取特権についても、当該区分所有権のある建物内の動産になり得る事になります。ペットを動産にすることも違和感を感じますが。
(不動産賃貸の先取特権)
第三百十二条 不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する。
(不動産賃貸の先取特権の目的物の範囲)
第三百十三条 土地の賃貸人の先取特権は、その土地又はその利用のための建物に備え付けられた動産、その土地の利用に供された動産及び賃借人が占有するその土地の果実について存在する。
2 建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する。
第三百十四条 賃借権の譲渡又は転貸の場合には、賃貸人の先取特権は、譲受人又は転借人の動産にも及ぶ。譲渡人又は転貸人が受けるべき金銭についても、同様とする。
(不動産賃貸の先取特権の被担保債権の範囲)
第三百十五条 賃借人の財産のすべてを清算する場合には、賃貸人の先取特権は、前期、当期及び次期の賃料その他の債務並びに前期及び当期に生じた損害の賠償債務についてのみ存在する。
第三百十六条 賃貸人は、第六百二十二条の二第一項に規定する敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。
(旅館宿泊の先取特権)
第三百十七条 旅館の宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料に関し、その旅館に在るその宿泊客の手荷物について存在する。
(運輸の先取特権)
第三百十八条 運輸の先取特権は、旅客又は荷物の運送賃及び付随の費用に関し、運送人の占有する荷物について存在する。
とあり、第312~318条は区分所有法の先取特権とは直接関係のない条文となるので参考までに。
先取特権は有効な権利なのか。
当該区分所有権のある建物内の動産や、当該区分所有権に限られるので、費用対効果、当事者の協力が無くては権利を行使出来ないことから、少額訴訟・支払督促・通常訴訟を使用した方が(裁判所で判決をもらう)、簡潔に、また、相手に対してプレッシャーとして使用でき優位に進める事ができるのではないでしょうか。
当事者に払ってと言っても「払えない」「払わない」方はいますので、次の8条(特定承継人の責任)で次の購入者に対しても支払う様に出来る条文となります。
次回は第8条から進めて行きます。